DENQUINA

ABOUT FOOD our partner / Yumi Morimoto

料理研究家

森本由美

つくる人も食べる人もお互いがより幸せになれる循環を。

「2年前、社員食堂を引き受けようと思ったのは、みんながハッピーになれるいい循環をつくりたかったからです。

実はいま、いい野菜をつくっているにも関わらず買い手がなく余ってしまって廃棄する小規模農家さんがたくさんいらっしゃいます。心を込めてつくられた野菜を、できるだけたくさん買ってあげたい。それをできるだけたくさんの人に食べてほしい。そのためには、わたしたちはできた野菜をどんなものでも全部買って、料理の食材として活用すればいい。個人で野菜を買っていても限界がありますが、社員食堂は小さな農家さんを応援するのにはうってつけです。

毎日届くいろいろな野菜で、今日はどんな献立にしようかと考えながら、かたちの悪い野菜もぜんぶつかって料理をします。オーガニックの野菜をつくることは本当に大変なこと。でもこうすれば農家さんは安心していい野菜をつくることだけに集中できると思います。しかもつくる人と食べる人がお互いの顔が見えるように感じ合えて、心のこもった食材がうまく循環すれば、つくる人も食べる人もより幸せだと思うんです」。

そう語るのは『DENQUINA TO GO』で料理人を務める森本由美さん。より良い食の在り方を長年探し続けてきた由美さんが、DEN PLUS EGGの社員食堂に関わり始めたのは、このことが大きな理由でした。生産者もお料理を提供する人もそれを食べる人も、全員がより幸せになる方法をいつも考えています。

社員食堂をスタートしたころの由美さん。一人ですべてをまかなっていた。

森本由美さんが食の大切さに気づいたのは、初めての赤ちゃんができたとき。母乳だけで育てようと思った由美さんは、いい母乳を出すために自身の食生活を見直すことを始めました。同時に赤ちゃんの肌を優しいガーゼで包みたいと思い、布おむつを使い始めました。3人の子どもに恵まれた由美さんは、毎日毎日赤ちゃんのために安全な食材を探し、ひたすら布おむつを洗い続ける日々の中で、食べ物のことやゴミの問題など、自然環境と自分たちの暮らしとの関わりについてだんだんと深く知っていくことになりました。

3人目の子どもが幼稚園に入るとき、しっかりとした意識を持って食育を考える幼稚園と出会い、そのキッチンで働き始める機会を得ました。子どもが卒園してもそのまま働き続け、5年間に渡って、食育について、循環について、環境について、深い知識を学ぶ時間を持てたのです。

その後、「未来ある子供達に繋げることの出来る心豊かな社会へ」…をコンセプトとしたコミュニティスペース『flag』を塩屋で立ち上げ、食のこと環境のことなどさまざまな循環についてイベントやワークショップを通して伝えてきました。(現在も活動中)

「最近は、“オーガニック”という言葉だけが先行していることに少し疑問を覚えます。わたしは完全オーガニックにこだわっているわけではないんです。ここで伝えたいことは、野菜を通して生産者を感じてもらい、自然環境を知ってもらうことです。

例えば、止むを得ずに農薬を1回使ったとします。きちんとそれを開示していただき、“どうして使ったのか”“なぜ使わなくてはいけなかったのか”、それを理解した上でその野菜を食べることで、農業や自然への理解がより深まると思っています。『DENQUINA TO GO』は、そこをきちんと伝えていける場になれればうれしいです」。

北海道洞爺の『佐々木ファーム』の根菜は、甘くて旨味がぎゅっと詰まっていてエネルギーいっぱい。

社員食堂の食材を支える主な生産者は3つの農家さんと1軒の八百屋さん。由美さんが昨年訪れた北海道・洞爺湖の佐々木ファーム。オーナーのマキさんは、原野を開拓した曾々祖父の気持ちを考えながら、自然農で野菜を育てています。電気もガスも使わない“アイスシェルター”は、冬の間に外気で凍らせた大きな氷で春から夏まで冷却する北海道ならではの大きな自然冷蔵庫、そこでゆっくり熟成されているビーツやジャガイモはとても甘くておいしくていつでも洞爺の雄大な自然を感じることができます。

またいつも新鮮な葉野菜を届けてくれるのは、朝来の天野菜果園。由美さんが『784JUNCTUIONCAFE』を通して知り合った小さな小さな農家さん。ご夫婦おふたりだけでこつこつと丁寧にいい野菜を育てています。いまではまるで専属農家さんのように、社員食堂のことを考えて、心を込めて野菜をつくってくれています。

そして小さな農家の野菜をまとめて買って販売のサポートをしている『オーガニック・クロッシング』は、flag立ち上げのころから由美さんとお付き合いのある八百屋さん。由美さん同様に、販売ルートを持たない小さな農家さんから野菜を買うことで生産者を支える活動を続けています。こちらから野菜を買うことで、間接的に農家さんをサポートできることになります。

最後にオムレツにサンドイッチに大活躍するおいしい卵を届けてくれるのは、佐賀県三瀬の「旅をする木」の小野寺さん。自らも美しい自然の中で暮らし、のびのびと育てられた平飼いの卵は優しい味わいで、黄身はきれいなレモンイエローの色をしています。

今日も北海道から、朝来から、北摂から新鮮な野菜が届き、献立は何にしようかと知恵を絞っている由美さんの姿が厨房にあります。自らでつくる塩麹や味噌を中心にして味付けをする料理はどれも決して派手ではないけれど、食べているうちにからだがイキイキしてくるような滋味深い味わいです。

最後にもうひとつ、関係ないかもしれませんが、と由美さんが話してくれたのはネイティブアメリカンの言葉「七代先の子孫を想い生きる」。これは、絶妙なバランスで保たれている自然を一部でも破壊したら元通りになるには7世代の時間がかかる、だから7代先の子孫のことまで思いを馳せて今を生きよという言い伝え。由美さんはこの言葉に込められた思いをいつも考えているのだといいます。「このことを常に考えていれば、壊すなんてことできないんです」。

オーガニック農業をがんばっている農家さんを支えることは、実はこの言葉にもつながっているのかもしれません。

週に2回届けられる天野菜果園の採りたて葉野菜。

佐賀県三瀬の小野寺さんの「旅をする木」の卵。

社員食堂にはときどきお土産が。

小野寺さんの卵のスペイン風オムレツ。

季節の旬の野菜や果実を扱っている。

6月の梅仕事に欠かせない赤紫蘇を準備。

2019/Jun/10