ABOUT FOOD our partner / Yumi Morimoto
森本由美
「2年前、社員食堂を引き受けようと思ったのは、みんながハッピーになれるいい循環をつくりたかったからです。
実はいま、いい野菜をつくっているにも関わらず買い手がなく余ってしまって廃棄する小規模農家さんがたくさんいらっしゃいます。心を込めてつくられた野菜を、できるだけたくさん買ってあげたい。それをできるだけたくさんの人に食べてほしい。そのためには、わたしたちはできた野菜をどんなものでも全部買って、料理の食材として活用すればいい。個人で野菜を買っていても限界がありますが、社員食堂は小さな農家さんを応援するのにはうってつけです。
毎日届くいろいろな野菜で、今日はどんな献立にしようかと考えながら、かたちの悪い野菜もぜんぶつかって料理をします。オーガニックの野菜をつくることは本当に大変なこと。でもこうすれば農家さんは安心していい野菜をつくることだけに集中できると思います。しかもつくる人と食べる人がお互いの顔が見えるように感じ合えて、心のこもった食材がうまく循環すれば、つくる人も食べる人もより幸せだと思うんです」。
そう語るのは『DENQUINA TO GO』で料理人を務める森本由美さん。より良い食の在り方を長年探し続けてきた由美さんが、DEN PLUS EGGの社員食堂に関わり始めたのは、このことが大きな理由でした。生産者もお料理を提供する人もそれを食べる人も、全員がより幸せになる方法をいつも考えています。
社員食堂の食材を支える主な生産者は3つの農家さんと1軒の八百屋さん。由美さんが昨年訪れた北海道・洞爺湖の佐々木ファーム。オーナーのマキさんは、原野を開拓した曾々祖父の気持ちを考えながら、自然農で野菜を育てています。電気もガスも使わない“アイスシェルター”は、冬の間に外気で凍らせた大きな氷で春から夏まで冷却する北海道ならではの大きな自然冷蔵庫、そこでゆっくり熟成されているビーツやジャガイモはとても甘くておいしくていつでも洞爺の雄大な自然を感じることができます。
またいつも新鮮な葉野菜を届けてくれるのは、朝来の天野菜果園。由美さんが『784JUNCTUIONCAFE』を通して知り合った小さな小さな農家さん。ご夫婦おふたりだけでこつこつと丁寧にいい野菜を育てています。いまではまるで専属農家さんのように、社員食堂のことを考えて、心を込めて野菜をつくってくれています。
そして小さな農家の野菜をまとめて買って販売のサポートをしている『オーガニック・クロッシング』は、flag立ち上げのころから由美さんとお付き合いのある八百屋さん。由美さん同様に、販売ルートを持たない小さな農家さんから野菜を買うことで生産者を支える活動を続けています。こちらから野菜を買うことで、間接的に農家さんをサポートできることになります。
最後にオムレツにサンドイッチに大活躍するおいしい卵を届けてくれるのは、佐賀県三瀬の「旅をする木」の小野寺さん。自らも美しい自然の中で暮らし、のびのびと育てられた平飼いの卵は優しい味わいで、黄身はきれいなレモンイエローの色をしています。
今日も北海道から、朝来から、北摂から新鮮な野菜が届き、献立は何にしようかと知恵を絞っている由美さんの姿が厨房にあります。自らでつくる塩麹や味噌を中心にして味付けをする料理はどれも決して派手ではないけれど、食べているうちにからだがイキイキしてくるような滋味深い味わいです。
最後にもうひとつ、関係ないかもしれませんが、と由美さんが話してくれたのはネイティブアメリカンの言葉「七代先の子孫を想い生きる」。これは、絶妙なバランスで保たれている自然を一部でも破壊したら元通りになるには7世代の時間がかかる、だから7代先の子孫のことまで思いを馳せて今を生きよという言い伝え。由美さんはこの言葉に込められた思いをいつも考えているのだといいます。「このことを常に考えていれば、壊すなんてことできないんです」。
オーガニック農業をがんばっている農家さんを支えることは、実はこの言葉にもつながっているのかもしれません。
2019/Jun/10